【海外日本語教育】インドネシアで気づいた「求めすぎていた」日本語

エッセイ

かぼちゃ太郎
かぼちゃ太郎

こんにちは!日本語パートナーズとしてインドネシア・西スマトラに派遣されていたかぼちゃ太郎です!

 今回は、私が「日本語パートナーズ」として派遣されてから半年が経過した時点で、私がその時考えていた文章を一部訂正・書き足して公開したいと思います!
 テーマは、「インドネシアで私が派遣されていた高校で経験した日本語教育の現状とその中での私の気づき」です!

 日本語パートナーズとは・・・
独立行政法人国際交流基金が実施しているプログラム。アジアの中学や高校に派遣され、現地で中長期間暮らしながら、日本語教師や生徒のパートナーとして授業のアシスタントや日本の文化紹介を行います。

詳しくは、こちらをチェック!
(日本語パートナーズホームページ:https://jfac.jp/partners/overview/

派遣されていたところってどんなところ?

 派遣されていた場所はインドネシアのスマトラ島のど真ん中!

西スマトラ州のブキティンギ(Bukittinggi)というインドネシア国内では観光地としてとても有名な街です!
(国内にとどまらず、私が派遣されていたコロナ禍前ではオーストラリアやヨーロッパからなど欧米圏からも観光客が訪れていました。そのため、厳格なイスラム圏の西スマトラでもお店でお酒が飲めます!スミノフも置いてあります!!!!最高~~~~)

 はい、ですが、今回は現地の日本語教育事情についてメインで紹介させていただきたいので、観光地については他のブログで紹介予定です(すみません、まだ全然かけていません。。。)ので、そちらをぜひ参照してください!(書けたらリンクをここに貼りますので少々お待ちください。。)

 その前にやはりどんな街で働いていたのか皆さん気になると思うので、一言でお伝えすると、、、

              大自然&多文化&伝統文化

                                 の街です!!!

 基本的に西スマトラでは多くの人がイスラム教を信仰していますが、空港があるパダンPadangという都市では、キリスト教徒や仏教を信じている人も多くおり、中国系の方が多く住む中華街もあります。
 言語に関してはというと、もちろん公用語としてインドネシア語を使っているのでインドネシア語を話せば生活に困ることはありません。しかし、インドネシアは世界有数の多民族国家であるため、どの地域にも地域言語というものが存在します。西スマトラはミナンカバウという地域で、地域言語としてはミナン語が話されています。(地域言語は他の地域では全く通じません。(笑)ジャカルタでミナン語を話してみたら「ん?」という顔されました(笑))単語は結構インドネシア語と似ているのですが、現地の人の話を聞いていても何を言っているのかわからないことばかりでした(笑)
 食事に関しては、基本的に辛いです。もう派遣された当初は食べ物が体に適応しておらず、口やのどや、おなかやおしりなどいろんなところに常に痛みを抱えていました。激辛ファイターのみなさんでも悶絶するぐらい辛いです。辛いのが苦手な人はなおさら大変です。私はちなみに後者なので、胃腸薬・下痢止めを常に持ち歩いていました。(ジャワ島の食べ物は甘めの味付けなので日本人にとってはとてもありがたいです笑)

パダン料理。小皿に分けてたくさん料理が運ばれてきます。この写真は先生のご自宅にて。

 

 現地の様子をもっとお伝えしたいですが、今回はとりあえずここまでにして、有名な観光地をちょこっとお見せします。

 どんなところなのかちょこっとだけお見せすると、、、

オランダ統治時代の名残で西洋風の時計台が街のシンボル。

 

 一つ目は毎日見ても圧倒されるきれいな時計台。ブキティンギの街のシンボルであり、同時に西スマトラのアイコンでもある「ジャム・ガダン(Jam Gadang)」です。私はこの広場を毎日横切って市場に下りそこから乗り合いバス通学していました。最近はこの広場の近くに新しいショッピングモールがオープンしたらしく大変にぎわっているようです。ちなみにGadangという言葉は地域言語のミナン語で「大きい」という意味、Jamはインドネシア語で「時計」という意味です!

 

西スマトラはミナンカバウという地域で、昔は大きな王国があった場所でもあります。

 この象徴的な屋根、一度見たら忘れられません。パガルユン(Pagaruyung)という街にある王宮です。一般的には「ルマ・ガダン(Rumah Gadang)」と言われ、かつてこの地域にあったミナンカバウ王国の中心でした。今は観光地として国内外から多くの観光客が訪れています。ちなみにGadangという言葉は地域言語のミナン語で「大きい」という意味があります。(Rumahは「家」というインドネシア語です)

ドデカすぎる岩。これがずーっと続いています。近くには滝があり流れてくるところが幻想的。

 最後に紹介するのはここ、「ハラウ渓谷(Harau Valley)」!
ここは初めて見たときには感動の嵐です。とにかくスケールがデカすぎます。現地の旅行会社の方からまずオススメされるのはここでした。近くにはヴィラもあり、とても有名な観光地になっています。西スマトラに観光に訪れた際にはぜひ!!!!

 まだまだ観光地を紹介したいところではありますが(日本語パートナーズの任期満了後は旅行会社で働いているので旅行についてはいつまでも語れます(笑))、本題はインドネシアの日本語教育事情、特に高校における日本語教育事情になりますので、次章からはそのお話になります。

 

インドネシアの基本的な教育制度って?

  はい、こちらの章からはまじめに(いつでもまじめにしてるつもりですが(笑))インドネシアの日本語教育事情について述べたいと思います。

 日本語パートナーズでは、ASEAN諸国(東南アジア諸国)の教育機関に派遣され活動をすることになり、派遣国や派遣期間、派遣地域によってどのような教育機関に派遣されるのかは異なってきます。
 今回私が派遣されたのはインドネシアの中等教育機関で、日本では高校にあたる教育機関に派遣されました。


 インドネシアでの初中等教育は日本と同じで6・3・3制を取っています。つまり、小学校6年・中学3年・高校3年ですね。日本では小学校を1年生、2年生、3年生・・・と数え、中学では中学1年生、2年生、3年生と数えますが、インドネシアでは中学校では7年生、8年生、9年生と通算で数えます。

 高校の種別でいうと、SMAと言われる普通高校、SMKと言われる専門高校、MAと言われる宗教高校の3つに分かれています。そしてSMAの中でも、「SMA」だけだと私立高校を指す場合が多く、公立(インドネシアでは公立はすべて国立です)の学校だと「SMAN」と書き、最後のNがNegeri、国立を意味します。

 この記事では、私の派遣されていた公立高校(インドネシアでは実際には国立)とイスラム系私立高校2校での日本語教育の状況についてカンタンに記したいと思います!あくまで私の学校の例なのでこれをすべてと思って読んでいただかないようにお願い致します。

インドネシアでの日本語教育ってどのように行われているの?

 インドネシアでの高校の日本語教育を一概にいうことは難しいですが、インドネシアでは全体で約70万人の日本語学習者がおり、とても多くの人が日本語を学習しています。この人数は学習者数約100万人の中国に次いで2番目の多さとなっており(国際交流基金「海外の日本語教育の現状 2018年度日本語教育機関調査」(https://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/survey/result/dl/survey2018/text.pdf))、その数の多さから見ても一概にいうことは難しいです。

 そして、インドネシアでは、約9割の日本語学習者が中学校・高校の中等教育で学んでいる生徒です(上の出典に同じ)。日本語という科目は、第二外国語科目として、選択必修科目の中に位置づけられ、他にはフランス語・ドイツ語・アラビア語・中国語・韓国語があり、どの言語を学ぶかどうかは学校が決めます。

公立(国立)高校の例

 私の派遣されていた公立高校では、ひらがな、カタカナを学ぶのが生徒には難しすぎる、時間がないという理由からひらがなとカタカナ(ましてや漢字は絶対ない笑)はすべては教えず、自分の名前だけ書けるようにしています。ホワイトボードに書く文字はアルファベット表記です。 
 日本語クラブ(クラブ活動・部活動のようなもの。日本のように多くの人が所属しているような部活動ではなく、もうすこし軽めの団体)の生徒たちはプラスアルファの学習として10年生(日本でいう高校1年生。インドネシアでは小学生から数字を積み重ねて表す))がひらがなとカタカナを勉強している形です。

 時間割だと高校1年生は週に45分×3コマ、高校2・3年生だと週に45分×4コマです。

 日本語は幸いにも子音+母音で発音できることからアルファベット化して書くのも簡単で、発音もインドネシアと同じようにアルファベットをそのまま読めばいいので、文字は書けないけれどコミュニケーションするのはあまり難しくないと生徒たちは言っていました。実際に、文字は全然かけないけれど、、、といいながらも私と会話を楽しめるぐらいの生徒は何人もいました。

私立高校の例(偏差値が高めの高校)

 そしてもう一方のイスラム系私立高校では、中高一貫校で生徒は中学から日本語を学んでいるため、ひらがな・カタカナは当たり前のように書くことができる子がほとんどでした。かつ、スマトラ島内各地・ジャカルタからも生徒が来るような全寮制の高校で、偏差値もやや高めの高校でもありました。第二外国語としては、中国語と日本語の2言語設定があり、それぞれ興味のあるほうを履修するという形です。

 時間割はどの学年も週に45分×2コマでした。

 日本語への取り組み方は個人によって全然違い、日本へ留学したい生徒は一生懸命勉強し、英語圏に留学したい生徒や他の生徒は、それなりに日本語を学んで楽しむというような感じでした。
 とはいっても、日本語の能力は比較的高く、留学を目指す生徒は話のスピードを緩めることなく話せるレベル(日本語検定3級程度)以上、留学を考えていない生徒でもゆっくり言葉を思い出しながら話す程度のレベルはあったかなあと思います。語彙についても公立高校と比べると幅広く学んでいる印象はありました。

現場で働いてみて気づいたこと

 日本の外に出て「日本語」に触れた半年間でしたが、「日本語は最低でもひらがなは書けないといけないのではないか」「漢字かけずに音の並びだけで勉強していたら、単語の意味を理解するのは難しいのでは」と思っていましたが、中等教育の外国語で学ぶ言語として「高いレベルでの日本語」を求めすぎているということを認識することができました。

 少し話はそれてしまいますが、私は海外に十数カ国旅や留学をして、英語は少しばかりは話すことができますが、意思疎通がやっとできる程度です。ですが、海外(英語圏を含む)に行っても「お前の英語意味わからねえから話聞かないよ」という態度は一度もとられたことはなく、むしろ私の意図を汲もうと熱心に聞いてくれました。ニューヨークのエンパイアステートビルの地下にあるスタバに立ち寄ったとき、頼んだはずのコーヒーが全然出てこない。。。と思って店員さんに「注文したんだけど、、、」とレシートを見せながら言うと、すでに作って呼んでいたのに来なかったから何分か待っている間に捨ててしまったというのです。 だがしかし、優しいお兄さんと年長のおそらく店長のおじさんが、「こっちがわるかったよ」といい無料で新しいモノを作ってくれ、笑顔で私の名前を書いたコップを渡してくれました。この時私は言語ではなく、思いやりは世界の共通言語なんだと感じたのです。

 一方日本では、海外から日本に来て住んでいる方や学んでいる学生に対して「高いレベルの日本語」を求めすぎているのではないかと思うときがあるのです。最近では東京の街中のコンビニやスーパーでは多くの海外からの学生たちが働いています。多くの店員の方は名札を見なければわからないぐらい流暢に話してくれますが、たまに日本語が拙いと高圧的な態度に出る人がいます。

 これが起こるのは、一つの理由として単に「外国人嫌い(外国人フォビア)」があると考えられますが、それとは別の要因としてここは日本だからもっと上手に日本語を話しなさいよと「上から目線」で日本にいる外国語母語話者に「高いレベルでの日本語」を求めすぎているからではないでしょうか。

 私がインドネシアで感じたのは、「高いレベルの日本語」ではなくても彼らの学ぶ日本語である程度の意思疎通、伝えたい感情は伝えることができます。ひらがな、漢字が書けなくてもいいのです。彼らはみな日本語教師を目指しているわけではないのですから。同じく、日本に住む外国人も言語のスペシャリストになるために日本に来ているのではなく、日本の生活を楽しみたい、日本で学んだり、働きたいと思ってきているだけなのですから赤の他人が「高いレベルの日本語」を強要する必要なんてありません。発音がおかしいとかなんかいって非難する必要なんて全くないのです。むしろその一言でその方の日本語学習意欲は急降下し日本語の成長は見られなくなるかもしれません。応援してあげることが大事なのではないでしょうか。

 ましてや、中等教育で学ぶ第二言語としての日本語を学んでいたインドネシアの高校生たちには「言語を楽しみながら、言語を通して文化を知る、他の文化に興味を寄せてみる」ことが一番のテーマなのではないでしょうか。もちろん、留学するのには一定のハードルがあり、それを超える必要が出てきますが、外国語学習者に高いレベルを私たちは最初から求めすぎていたのかもしれません。

 以上、私がインドネシアで学ばせていただいたことは、言語で優位に立とうとするなんて意味がないということ。それぞれの目的に合わせて日本語を学習してもらい、教える日本語教師はそれぞれの目標に合わせたサポートと応援をすることが大事なのです。そして最も大事なことは、言語を通じて他の文化に触れてみる、もし少しでも関心があればどんどん知ってもらえる準備をすることです。

 最後に私が経験して感じたパートナーズの役割と現地でも有名なあのアーティストについておまけを載せておきます!興味のある方はぜひ!!!!

 日本語パートナーズの役割って?
 日本語パートナーズで求められることは、生徒に日本語を通じて日本の文化を知ってもらう、かつ、そのパートナーズ本人だけが「日本」ではなく、日本の文化を体現できるたったの一例であることをしってもらい、パートナーズ自身も現地の文化を知り、染まって、相互の文化交流をすることです。そのちいさなつながりがいつか、日本とインドネシア等派遣国との将来の関係性をよりよくし、発展につなぐことができる一助となるのが求められていた日本語パートナーズの役割だと思います。

おまけ~インドネシアでも大人気!米津玄師さんのLemon!~

 日本語クラブ以外の子にもやはりアニメ好きでYouTubeや違法サイトで日本語音声、インドネシア語と日本語のアルファベットの字幕でアニメを見ているそうです。しかし、日本人が配信してるYouTubeで動画をみようとして、ひらがな等の文字で書いてあり、読めないことから、日本語話者ではない人がアルファベットに文字起こししたものをみんな見ており、たまーに字幕が間違っていたりしています。こんなとき、「先生」(日本語パートナーズは正式には先生ではなく、アシスタント・日本でいう英語のALTの先生としての立場なのだが、生徒から見れば先生」として派遣されている私としては、「間違って言葉を覚えてほしくないなぁ」と思いながら生徒と動画を見ています(笑)

 もちろん遊びや趣味の一環で動画を見ているときは「それ間違っているからこっちで覚えて!」とは言えないので、勉強として見ているときは、誇張しすぎず、遊びの動画の訂正をしていっています。また米津玄師さんの歌うLemonはインドネシアでも,特に日本語を学んでいる人たちの中ではよく知られています。米津玄師さんの公式のミュージックビデオももちろん見られていますが、生徒たちは歌詞を見て歌いたいと思っても日本語表示になってしまうため、アルファベット表記で歌詞が読める動画がが普及してしまっています。(笑)そのYouTuberの歌い方にめちゃくちゃクセがあり、楽しんでLemonを歌う生徒はそのYouTuberの癖を見事習得しまっているため、米津玄師ファンの私としては「なんやこの歌い方〜」という感じではありますが、なんとも言えず歯がゆい思いをしています。(笑)

 とはいっても日本語を学ぶ機会、意欲を高めるためには絶大な効果があるのでいいかと思っています。頭ごなしに教えるより、自主的に学ぶ姿勢が生徒の力を何倍にも伸ばしますよね!

それではまたよろしくお願いします!(日本語教育についてや現地の生活状況、苦しかった思い出、観光についてもじゃんじゃん書いていきたいと思います!)

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